ジョーティシュで成功するための5原則

何年にもわたって多くのジョーティシュやヴェーダ占星術の先達から、ジョーティシュの学習を成功させるために必要な条件を聞いてきました。わたしの場合、とくにKNラオとハード・デフォーの言葉から強く影響を受けています。このお二人は、いずれも、今日のジョーティシュ界ではもっともすぐれた教師であるといえるでしょう。ジョーティシュを学ぶみなさんが確固たる礎を築かれるために、そのなかから重要な条件を紹介いたします。

なにを学ぶにせよ、たとえばそれがジョーティシュであれ、音楽であれ、医術であれ、なんであれ、登山にたとえることができます。つまり、なんとしてでも目的地に到着するんだという確固たる強い意志、スキル、そしてそれに見合った努力が必要です。それは、登山に必要な十徳道具――登山ナイフ、救急箱、マッチ(ライター)、地図、コンパス、などなど――のようなものです。ジョーティシュにおいては、最低五つの原則があります。

それら五つの原則についてひとつずつ説明します。

1)スキルを身につける

ジョーティシュは、一種の学術的な素養を必要とする、科学の一分野といえます。たとえば、膨大な専門用語を覚えなければなりません。そして、それは避けることができません。それは、ピアニストが、音階が完全に身に付くまで練習を積まなければならないのに似ています。占星術家も、専門スキルを、ホロスコープを分析するときに違和感なく使えるようになるまで練習しなければなりません。

占星術家は、ホロスコープを分析した結論に至った経緯について、明瞭で論理的な説明ができなければなりません。例を挙げましょう。

「この人はおそらく子供を授かるでしょう。子供を表す5室は凶星からのアスペクトを逃れており、吉星で子供を表す木星が5室にアスペクトしているからです。しかも木星は1室の定座でハンサ・マハープルシャ・ヨーガを形成し、たいへん強くなっています。加えて、5室の支配星はケンドラに在住し、しかもそこは友好の惑星が支配する星座でもあり、さらに吉星の金星からアスペクトされています。同様のパターンが、月を1室としてみた場合やナヴァムシャでも見られます・・・・」

一見すると複雑に見えるかもしれません。しかし、ここに書かれている内容は、基本的なスキルの範囲内におさまります。

2)場数を踏む

専門用語を覚えるだけではだめです。それらをできるだけ多くのホロスコープに実際にあてはめて使ってみなければ意味がありません。ワークショップに何回出ても、専門書を何冊も読んでも、実際にホロスコープを読む行為に勝りません。

だからといって、経験値を積むだけのために無理して鑑定をする必要はありません。だれかのホロスコープで、過去の出来事を検証するのもいいでしょう。それなら、正確に事象を読み取り、適切なアドバイスをしなければならないというプレッシャーもありません。たとえば、アカデミー賞を受賞した有名俳優のホロスコープを研究したり、昇進を果たした友人のホロスコープを検証してみるのもいいでしょう。有名人のホロスコープや、性格や特徴がはっきりしている個人のホロスコープを検証してみるのも手です。ホロスコープの実例を載せた書籍や雑誌も出回っています。

つねにホロスコープを検証する癖をつけること。たとえば、毎日3つ以上のホロスコープを検証する癖をつけるなら、ジョーティシュの理解は劇的に深まること請け合いです。

3)ジョーティシュ・グルをもつ

ジョーティシュを学習するあいだは、自分より経験を積んだ人でなければわからないような疑問が浮かんでくることは避けられません。ジョーティシュの学習には、先生、すなわちジョーティシュ・グルの存在が不可欠です。ジョーティシュ・グルは、あなたの頭の混乱を解決し、物事が明確に見えるようにしてくれます。グルの「グ(Gu)」には、「闇」「無知」という意味があり、グルの「ル(ru)」には、「取り除く者」という意味があります。

ジョーティシュは口頭伝承の伝統の上に成立しています。古来、弟子はグルの前に長時間座わりながら、ジョーティシュの教典を朗誦し、法則について論じ、ホロスコープを検証してきました。そのようにして弟子は、グルの洗練された洞察力を学び取ってきたのです。優れた先生から学ぶという方法以外に、ジョーティシュを習得する道はありません。

ハート・デフォーは、ある道教の師が「師とはなんでしょうか?」と弟子に聞かれ、「師とは、あなたより早く始めた人のことだ」と答えたという話をよくします。ジョーティシュ・グルも、有名である必要もないし、伝説的な存在である必要もありません。もちろん、それが理想です。しかし、それがいつも可能とは限りません。少なくとも、師となる人は、あなたより経験が豊かで、容易にコンタクトが取れて、問題を解決してくれればいいのです。

4)スピリチュアルな実践をする

ジョーティシュはスピリチュアル・サイエンスです。スキルの習得だけで学びきれるものではありません。学んでいく過程で必ず、直感と知性を融合させないと占星術の記号を正しく解釈できない段階が訪れます。そして直感は、スピリチュアルな実践によって開発されます。

昔から、ジョーティシュを実践する者は、直感を得るためにイシュタ・デーヴァ(守護神)を礼拝していました。たとえば、ヴェーダ占星術家がガネーシャ神をしばしば「崇拝」するのは、ガネーシャがジョーティシュの守護神として見られているからです。神への「崇拝」は、神の一面に対する献身であり、一般に思われるように単に「崇めている」わけではありません。 プージャ(崇拝)をしようが、マントラ(真言)を唱えようが、瞑想をしようが、お祈りを捧げようが、アファーメーション(心に決めたことを何度も繰り返して心に刻み込むこと)をしようが、なにをしようが、大切なのは、直感の源泉となる平安と透明さを心の中にはぐくむことなのです。最低20分、毎日2回、スピリチュアルな実践を行ってください。できるなら日出と日没がいいでしょう。

ジョーティシュは、光の科学と呼ばれます。「ジョーティ(Jyoti)」は「光」を表しますが、その「光」は星々の輝きを表します。しかしわたしたちのリアリティは心の現れですから、「光」は内なる神の光でもあります。ですから、ジョーティシュを実践するには、外側で起きる現象を明確に解釈するためにも、内側の「光」に心の波長を合わせる必要があります。

5)高い倫理を確立する

スピリチュアルな実践をする過程で、ジョーティシュの実践家は内なる光を体験します。しかし、ジョーティシュの実践が倫理にかなうものでなければ、心の透明性は失われ、光は消え失せます。ジョーティシュは、人々の幸福と利益のために、偉大な聖仙たちによってこの世にもたらされました。ジョーティシュを実践する者がそれら聖仙と同じ姿勢で臨み、彼らの尊い動機がかなえられるなら、ジョーティシュの実践はたいへんな効果を発揮するでしょう。ダライ・ラマ14世は、「倫理的な実践の鍵は、他人の幸福への配慮である」と言いました。

カウンセリングと同様に、占星術も人の手助けをする職業です。しかも、ジョーティシュはたいへん強力な予言システムです。ジョーティシュを実践する人が吐いた言葉は、良かれ悪しかれ、人々に強い影響を与えます。ですから、一言一句をよく吟味し、それが究極的にその人にとって役に立つのかどうかを考えながら発言しなければなりません。

実際、運命的なことを言って人を恐怖させるのは、まったく無意味です。加えて、経済効果を高めるために、高価で不必要な処方を勧めるのは、倫理に反しています。ジョーティシュを実践する者がクライアントとの関係をどのように扱うかは、結果的に、カルマとなって自分自身に返ってくることを肝に銘じるべきです。

ジョーティシュの古典からの引用

賢者ヴァラハミヒラ『ブリハット・サンヒター』から

「占星術家は、清潔で、優秀で、大胆で、雄弁で、才能豊かで、誠実で、集会で臆することなく、生徒に押し切られることなく、エキスパートであり、治療と予言のいずれの術にも通じ、処方を与えることができなければならない」

聖仙パラシャラ『ブリハット・パラシャラ・ホラ・シャーストラ』から

「この至高のヴェーダンガ・ジョーティシュ・シャーストラは、従順で人から愛され、誠実で、頭脳明晰で、よく知っている人のみに教えなさい。時と惑星の配置とナクシャトラを正しく理解し、このホラ・シャーストラを理解できるその人だけに。ホラ・シャーストラを完璧に理解でき、誠実で、良い予言であれ不吉な予言であれ、正確にできるその人だけに」(第97章)