木星と土星のダブル・トランジット

The Double Transit Phenomenon of Jupiter  & Saturn – September 3, 2003

ヴェーダ占星術を学ぶうえでのポイントは、学んだ原則を実際のホロスコープにあてはめてみることです。この記事では、木星と土星のダブル・トランジットについて説明します。木星と土星のダブル・トランジットを使った技法は、たいへん有益で、しかも信頼でき、だれでもすぐに使えます。みなさんも、この技法を実際に試してみることで、その効果をすぐに実感できるでしょう。

木星と土星のトランジット

木星と土星は、ヴェーダ占星術において用いられる惑星の中でもっとも遅く動く惑星です。木星と土星のトランジットは、予言技法の中でももっとも重視されています。木星はひとつの星座をトランジットするのに約1年かかります。土星は約2年半かかります。

木星のトランジットの効果は、肯定的で、拡大、成長、新しい機会を意味し、トランジットするハウスやアスペクトするハウスの象意を強調するものと考えがちです。同様に、土星のトランジットの効果は、否定的で、破壊的で、制約や障害・困難をもたらし、トランジットするハウスやアスペクトするハウスの象意を否定するかのように考えがちです。しかし、土星は確かに否定的な結果を招くこともありますが、いつもそうであるとは限りません。

わたしのジョーティシュ・グルであるKNラオは、「Ups and Downs                                 in Career」という本のなかで、「だれにとってもなにか重要なことが起きるときは必ずトランジットの土星と木星が重要な役目を果たしている」と書いています。もし、土星のトランジットが良い結果をもたらすことがないとしたら、そのようなことが実際あり得るのでしょうか。

なにかを行うとき、木星は直感をもたらし、土星はそれにかたちを与えます。土星の影響なくして、なにごとも長続きしません。木星は斬新で発展的なアイディをもたらしますが、それを実現する力があるわけではありません。ですから、大事を為すためにはどちらの要素も必要なのです。

これは、樹にたとえるとうまく表現できます。樹の根と幹が土星で、葉と枝が木星です。天に向かって伸びようとする木星に対して、確固たる基礎を与えるのが土星です。重大で永続的な成長には、どちらの要素も必要なのです。

ダブル・トランジット

これまで説明してきたことをきちんと理解するなら、トランジットの木星と土星が同時にアスペクトする星座には、重大な出来事が起こりやすいことがわかります。そのような星座は、木星本来の拡大のエネルギーと、それを現象化させようとする土星のエネルギーによって、強烈に活性化されます。そうでなければ土星のトランジットは制約と困難をもたらすだけですが、木星のトランジットの影響によって、賢く、吉祥な働きをするようになります。一方、木星も、そうでなければ非現実的ではた迷惑な理想論ばかりをぶちあげる木星のトランジットですが、土星のトランジットの影響によって、より現実的に集中力を発揮することができるようになるのです。木星と土星の影響力が重なることで、その2つの惑星がトランジットやアスペクトするハウスのテーマに関して、達成、ブレークスルー、進歩がもたらされるのです。

土星と木星がトランジットやアスペクトするハウスを見る癖をつけると、たいへん便利です。不思議なことに、多くの占星術家はこの簡便な技法にあまり注意を払っていません。そのために、特定の時期にフォーカスすべき個々人のエネルギーの所在について、貴重な洞察を得ることができないでいます。

注意しなければならないのは、たしかに木星と土星のダブル・トランジットに着目する技法は信頼するに足り、実際に作用しますが、ヴェーダ占星術においては、ヨーガとダシャーも一緒に考慮されなければなりません。もし、トランジットだけを根拠に結論づけるなら、たとえそれが木星と土星のダブル・トランジットであっても、結果に失望することになるでしょう。もし、ダブル・トランジットが示す進展と達成が、ヨーガやダシャーによっても確認できないのなら、それは実現しません。しかし、それは、その人の人生にとって重要な意味を持つ分野であるかも知れません。ですから、ヨーガやダシャーについてそれほど詳しくなくても、ダブル・トランジットだけでもチェックする価値はあります。

木星と土星の特別なアスペクト

トランジットの木星と土星がどこにアスペクトをしているのかを、どうやって知ることができるのでしょうか? ヴェーダ占星術のアスペクトは、西洋占星術のアスエペクトとは大きく異なります。どの惑星も、在住するハウスと、そこから数えて7番目のハウスにアスペクトします。つまり、1室目と7室目にアスペクトします。加えて、木星と土星と火星には特別のアスペクトがあります。木星は5番目と9番目のハウスにもアスペクトします。土星は3番目と10番目のハウスにもアスペクトします。火星は、4番目と8番目のハウスにもアスペクトします。ですから、木星と土星は、在住するハウスも含めて、それぞれ4つのハウスにアスペクトすることになります。そして土星と木星のアスペクトが重なるとき、そのハウスにダブル・トランジットの影響が及んでいると解釈します。

ダブル・トランジットの例

以下の例では、ダブル・トランジットが魚座にあるのがわかります。これは、2002年7月24日から2003年7月30日までの期間に起きる現象です。土星は双子座をトランジットして、獅子座、射手座、魚座にアスペクトしています。木星は蟹座をトランジットして、蠍座、山羊座、魚座にアスペクトしています。ですから、木星と土星のトランジットの両方からアスペクトされる星座は、魚座だけです。しかし、2003年1月9日から同年4月8日までは、土星は逆行して牡牛座に戻ったりしています。ですから、その期間は、ダブル・トランジットは蟹座と蠍座にシフトすることになります。

魚座がどのハウスになるかはアセンダントがどこにあるかによります。そして、それによってホロスコープにおけるダブル・トランジットの影響の解釈が変わってきます。たとえば、双子座にアセンダントがある場合、ダブル・トランジットは、キャリアが達成し、拡大する可能性を示しています。